STORY

STORY 12「希望はいつだってここにある」

時は少しだけ遡る。
――皐月はずっと考えていた。

【欠陥概念(バグコード)】という心の欠陥――カタチにならない自分の魔法のことを。
そして可能性に辿り着いた。
皐月が不安に思っているのは【未来】だと自覚している。
カタチが決まって見えているわけじゃない、幻想のような希望。

「だから、力が強くても、カタチに成らない……?」

ならば将来の夢とか、お仕事とか、叶えたいこと。
とにかく色んなことが決まっていったら、いつか【欠陥概念(バグコード)】が埋まって魔法は使えなくなるのではないだろうか?
普通の人間になれるのではないだろうか?

「でも今は……そんな可能性だけでいい。」

そして今――。

つむぎが放った暴風の塊は、統と皐月に命中するその瞬間、大きな音を立てて消滅した。
驚愕のまま言葉を失うつむぎの懐に統が一瞬で滑り込み、華奢な体に当身をする。
体から力が抜けたつむぎは、統に抱きつくように倒れる。「今の何?」という視線を送るつむぎに答えたのは皐月だった。

「私、無駄に魔力放出量だけは多いみたいで……。ムギ先輩の風にうりゃー!って魔力をいっぱいぶつけました」

魔力の放出だけで、竜巻レベルの風圧を打ち消したというのだ。

「なんだよそれぇ……むちゃくちゃだよ」

面白そうに愉快そうに、そして楽しそうにつむぎは意識を失った。

その後、律の母親が隠していた日記から魔法使い連盟の不正行為が明るみとなり、それに関わっていた魔法つかいたちはクラウンにより処罰された。
他にも何か隠していることがありそうな雰囲気だったそうだが、魔法使い連盟が雇った刺客が母親を殺したという真実を知れて、律はどこか満足そうだった。

独断先行についてはかなり皐月と統に怒られた。ついでにミズハも一緒にだ。
つむぎは『未熟な魔法使いに負けた』という黒星により、一時的に『秘匿者』の役割を凍結され、しばらくはただの学生身分になるそうだ。

ヴァリアントの絆はこの一件を通して、
更に固く結ばれたのだった。

ここは『教導学園アイリス』。

世間から切り離された魔法使いの学び舎。
今日もヴァリアントコミュニティの少女たちの笑い声と、魔法が響き渡る。
皐月が魔力を暴発させ、統が勢い余って壁を殴り抜き、
ミズハが電化製品を暴走させ、律がそれを防ぎ、
奏が黒焦げになったメンバーを治療し、つむぎが降りかかるものを吹き飛ばす。

そんな愉快な魔法使いたちのお話は、これからもまだまだ続いていく。